■アルゼンチンとブラジルの違い

 だが、戦術やスタイルは共通化しても、選手個々のプレー・スタイルにはそれぞれの国のサッカー文化が残っているようだ。

 たとえば、ブラジル人選手のドリブル・テクニックは、アルゼンチン人選手とは異なっている。

 アルゼンチン選手は細かいタッチでボールの動きを変化させるのを得意としているが、ブラジル人選手のドリブルはボディフェイントを駆使して相手を翻弄するのである。

 遠い昔の話だが、昨年の暮れに亡くなったペレの名場面の一つに、1970年ワールドカップ準々決勝のウルグアイ戦でウルグアイの名GKラディスラオ・マズルケビッチを翻弄したプレーがある。マズルケビッチが飛び出してくるのを、ボールに一度も触らずにかわしてしまったプレーだ。つまり、体を使ったフェイントだけでマズルケビッチを困惑させて抜け出したのだ(ただし、がら空きのゴールに向かって放ったシュートは惜しくも枠をはずれた)。

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