■消えることのない特長
ボディフェイントがうまいブラジル人選手(とくにアフリカ系の選手)の動きを見ていると、僕はブラジル独特の格闘技であるカポエイラを連想してしまう。アフリカ大陸から奴隷として新大陸に連れてこられた人たちが編み出した格闘技であり、また同時にダンスでもある(ブラジル政府は奴隷たちが格闘技を練習することを禁止したため、ダンスのふりをして修練を積んだとも言われている)。
こうしたブラジル人独特の体の使い方はサンバの踊りとも似ているし、日本生まれの柔術を発展させたブラジリアン柔術とも共通しているように見える。
そうしたブラジルの身体的な文化が、現在のブラジル人サッカー選手のドリブルのスタイルにも影響を与えているのだ。
いくら戦術が共通化されても、やはりその国のサッカー・スタイルの特長は残っているのだ。それは、どんなに正確な文法で英語をしゃべっても、発音の部分には母語の影響が残ってしまうのと似ているかもしれない。
それなら、現代の若い日本人選手が日本人的な体の使い方を武器にしてヨーロッパや南米、アフリカの屈強な選手たちと対峙することもありえないことではない。
そして、体の使い方を工夫し、テクニックを駆使することによって、相手との直接的なボディ・コンタクトを回避することが可能なサッカーというスポーツは、ボディ・コンタクトを避けることが不可能なラグビーなどと比べて、パワー系で劣る日本人に向いているのかもしれない。