■入場時のブーイングで感じたこと
しかし後半34分、すでに2人の交代を行っていた鬼木達監督は3枚替えを行う。その中に松長根の名前はなく、この交代は、初めてベンチ入りした背番号27がピッチに立てないことも意味していた。
それでも、松長根は変わらず戦っていた。「悔しかったですけど」と気持ちを表したうえで、「まだ(0-1で)負けていたので、チームのために、まずは声を出すことなど、やることはやろうと思っていました」と力強く振り返ったのだ。
高校生離れしたプロ意識の高さを持つが、さらに強靭なメンタリティであることを感じさせたのは入場時の場面。「最初、アップで入場したとき鹿島(側)からブーイングが来て、ユースではブーイングを食らったことがなかったので、“おおー”と思いました(笑)」と話したのだ。その松長根に、その時に気持ちが高ぶったかを聞くと、「そうですね。緊張はミーティングのときだけです」と即答してみせた。
翌朝に行われた大宮アルディージャとのトレーニングマッチではフル出場。負けはしたものの、後半途中からはユース所属選手3人と組んだ最終ラインを統率してみせた。
川崎は次戦に山村和也が出場停止となり、松長根にはまたチャンスが訪れるかもしれない。スクランブルや緊急事態という言葉は引き続き飛び交うかもしれないが、ベンチから闘志をたぎらせている背番号27の表情は、それを吹き飛ばすほどに力強いものだった。
(取材・文/中地拓也)