■自由旅行ができなかった中国
僕が初めて中国に行ったのは1979年のことでした(『蹴球放浪記』第94回「文革直後の中国でパンダにもなった気分」の巻)。毛沢東主席が亡くなってまだ3年。中国はまだ閉ざされた国でした。
当時は団体旅行しか許されていませんでした。現地での日程はすべて国営旅行会社「中国国際旅行社」を通じて手配するのですが、出発まで宿泊先のホテル名も教えてもらえません。いや、上海に着いてからも、次の訪問地である北京の宿泊先は分からないのです。国際旅行社上海支社のガイドも、北京での日程については何も知らないのです。
最初の中国旅行の翌1980年の暮れに、スペイン・ワールドカップ予選があったので香港に行きました。そして、香港にある旅行会社で中国のビザが取れるようになったというので、観光で国境を越えてみることにしました。
ただし、団体行動で1日ビザしかもらえません。つまり日帰りです。
国境を越えて、「深セン」という広東省の田舎町を見学して帰ってくるだけ。それでも、難しい手続きもなく、料金を払うだけで国境を越えて中国に入れるというのは画期的なことでした(第95回「香港から陸路国境を越えて中国入り」の巻)。