■鹿島の見事な準備と努力
後半は規定どおり前半終了から15分後にキックオフされたが、霧はおさまらず、16分、飯田主審は再び試合を止めた。すると係員がピッチに何か大きなものを持ち出す。巨大な扇風機だった。ピッチに風を送り、霧を払ったのだ。この努力が実り、10分間の中断の後に試合再開。後半のアディショナルタイムに再び鹿島が得点し、2-0で勝って試合を終えた。
ちなみに、鹿島の2点目を決めたのは鈴木優磨、仙台のゴールを守っていたのはシュミット・ダニエル。この2人は後にベルギーのシントトロイデンでチームメートとなる。鹿島のGKが曽ヶ端準、中盤で試合をコントロールしていたのは小笠原満男だった。一方の仙台では、前線で西村拓真が奮闘していた。
私が感心したのは、鹿島アントラーズがすばやく「カラーボール」を用意し、後半には扇風機まで持ち出してなんとか試合を中止せずにやり遂げたことだった。Jリーグの試合球は公式サプライヤーのモルテンから提供されるが、カラーボールは主として雪国のチームのために用意されたものだった。しかし鹿島はスタジアムからわずか1500メートルのところに広がる鹿島灘で頻繁に濃霧が発生し、スタジアムにまで影響を及ぼす場合もあることから、特別にリクエストを出してカラーボールの提供を受けていたのだ。扇風機はピッチの芝育成用のものだが、濃霧のときにはこれも使おうと用意していたのだろう。いずれにしろ、試合を成立させた準備と努力は見事だった。
だがピッチ上ではなんとか試合ができる状況でも、観客席のファンやテレビ(この試合はDAZNのみの放送だった)で見ていたファンには、何が何だかわからない展開だっただろう。選手や審判員たちには見えていても、観客席からはカラーボールでも遠くにあると見えない。選手たちがなんとなく動き回っているのはわかるが、ボールの動きはさっぱりわからず、鹿島の選手たちが喜んでいるから点がはいったと推察するしかない。試合を成立させることは非常に大事だが、プロとしてどうなのかと思ってしまう。