■Jリーグでの事例
サッカーは雨で中止になる競技ではない。しかし霧には弱い。霧は大気中の水分が冷却などで飽和状態(これ以上気体としてとどまっていられない状態)となって微小な水滴となり、空気中に浮遊するもので、基本的には「雲」と同じだが、空に浮かんでいるものを雲、そして地表にあるものを霧というらしい。「もや」も同じ現象だが、視界が1キロメートルを割ると、気象庁では「霧」と呼ぶことにしているという。そしてそれが100メートルを切ると、「濃霧」ということになる。
こうなると大変だ。サッカーのピッチは108メートル×68メートル。濃霧が発生すると、GKは相手ゴールポストが見えない状態となる。そして副審は逆側のタッチライン近くの選手の動きが確認しにくくなるだろう。これでは試合はできないから、中断ということになる。
2017年のJリーグで霧によって試合が二度も中断された試合があった。J1第20節の鹿島アントラーズ対ベガルタ仙台、8月5日にカシマスタジアムで行われた試合である。午後6時半のキックオフ時からもやっていたスタジアム内だが、試合が進むとともにどんどん霧が濃くなり、ボールが見にくくなった。
この年のJリーグ使用球はアディダスの「クラサバ」というデザインのもので、白地に赤と黒の「×」印が6つ描かれたものだった。全体的な印象としては白いボールである。しかし霧のなかでは非常に見えにくい。そこで運営を担当する鹿島アントラーズはオレンジ色をベースとした「カラーボール」を持ち出し、前半24分の鹿島のスローインからこのボールがピッチにはいった。しかし霧はさらに濃くなる。
3分後、飯田淳平主審は試合を止め、三原純副審、堀越雅弘副審、そして第4の権田智久審判員と協議、「逆サイドが見えない」ことを確認すると、一時中断を決めた。しかしこのときにはすぐに状況がよくなり、3分後に試合再開、前半のアディショナルタイムに鹿島の土居聖真が右から抜け出して先制点を決め、どうにか前半を終えた。