■日本全土を覆う「おらが村」の意識

大住 その意味でJリーグはもの足りない?

湯浅 意識は高くなっている。それは、前回大住さんと話したときにも言ったよね。ハードワークしたら、「これ楽しいじゃん」っていうのを。

大住 ハードワークしたら取れるぞ、切り替えが早ければいけるぞって。そうしたところをさらに高めてほしいな。ハードワークはきっとファンの心をつかむはずだから。

湯浅 主体的にハードワークする選手たちを、今季はどのクラブでもたくさん見たい。

大住 新シーズンを前にこんなことを言ったら水をさすかもしれないけど、どうもワクワクしないんだよね。J1の新監督は2人だけで、あとは昨年までと同じ。大きな移籍もないし。セレッソ大阪香川真司FC東京仲川輝人ぐらいかな。

湯浅 ワクワクする対象というのは2つあると思う。さっき言った「サッカーのメカニズム」、不確実なゲームであるということが、ゆっくりとではあるけれど、理解され始めている。中村憲剛の話はショッキングだけど、それでもワールドカップを通じて多くの人がサッカー自体を楽しめるようになってきていると思う。

大住 2つ目は?

湯浅 いわゆる「おらが村」の意識。今季は60クラブになった。

大住 奈良クラブとFC大阪がJ3に昇格して、全60クラブ。所在地も41都道府県となった。Jリーグは、日本全土を覆いつつあると言っても過言ではない。

湯浅 そうなると、多くの人に参加意識、当事者意識というものが出てくる。マーケティング的な考え方からすると、それはカネを注ぎ込むモチベーションとしてはかなり高位な部類になる。Jリーグの大きなアドバンテージだよね。

大住 「地元愛」というのは理屈抜きだからね。

湯浅 僕は6年間ケルンにいたので、あそこのことはいまでもよく知っている。僕がいたころに奥寺康彦がきて2冠を達成した1FCケルンは、今季は2部だし、もうひとつのビクトリア・ケルンなんか3部か4部。それでも僕にとっては「マイクラブ」で、毎週試合結果は気にしている。

 Jリーグの60のクラブには、そうした地元のファンがついているはずなんだ。本当は、大谷翔平や松山英樹のような「スーパースター」がいればいいんだけど…。

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