■正確な判定のコストの価値

 もともとアウトオブプレーになることが多い競技であれば、判定のために審判がゲームを途切れさせることにも違和感はない。

 ラグビーのビデオ判定システム「TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)」では、レフェリーはスタジアムの大型映像装置に映し出される映像を見て判定を下す(観客もレフェリーと同じ映像を見ることができる)。アシスタント・レフェリー2人を傍らに呼んで、TMOとコミュニケーション・システムを通じて会話しながら判定が行われる。その会話の内容はテレビ中継の音声として流されるが、サッカーのVARの緊迫したやり取りを聞きなれている人間としては「かなりゆったりとした会話」という印象が残る。

 前述のメディアに対するブリーフィングでは、両者のやり取りの実例を聞かせてもらえることが多いのだが、なるべくプレーを止める時間を短くするためにサッカーのレフェリーとVARの間では相当に緊迫した会話が行われているのである。

 プレーが止まらないのが魅力であるサッカーでは、判定のために待たされる時間は観客の楽しみを奪うことになる。

 もちろん、それは正確な判定をするためのコストと考えるべきだろう。

 だから、その判定の内容が重大なものであれば、たとえ数分間プレーが止まったとしても仕方がない。たとえば、ボールがゴールラインを割っていたかどうか。つまり、得点か否か。それは、どれほど時間がかかってもクリアすべき判定だ。

 だが、「オフサイドか否か」が、そこまで重要な判定であるとは思えない。

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