■駆け引きでの完勝
その3人のさらに右の手前には、アルゼンチンのメッシがなんとなく立っている。これでアルゼンチンのフィールドプレーヤーは9人になる。10人目、MFエンソ・フェルナンデスは、最初はファンダイクを気にするそぶりだったのだが、何かを感じたのか、キックの直前に左に動き、壁の横に立つ3人のオランダ選手の一番右にいるフランキー・デヨングの背中についた。
ボールの後ろに立ったオランダ選手は、右利きのFWコディ・ハクポと左利きのMFテーン・コープマイナース。オランダの選択は、この2人のどちらかが直接狙うか、それともファンダイクに合わせるのか、そのどちらかだと思われた。得点の可能性から言って、それ以外の選択肢は考えられなかった。
だが、オランダは意表をついた。コープマイナースが左足で3人の壁の中央に立つFWウェフホルストに丁寧なグラウンダーのパスを出す。アルゼンチンのフェルナンデスがかき分けるようにF・デヨングの背後からウェフホルストに寄せる。しかしゴール方向に向き直ったウェフホルストはボールをワンタッチでフェルナンデスから遠い左前に置いていた。そしてフェルナンデスのタックルの下をかいくぐって左足でボールをゴール右隅に送り込んだのだ。
時計は「後半55分31秒」を指していた。その1分後、キックオフしたアルゼンチンのボールがオランダに奪われた瞬間に終了の笛が吹かれた。まさに劇的な同点ゴールで試合は延長戦にはいることになったのだ。