論拠が薄い「ヨーロッパ的な自由競争」原理導入【Jリーグが動き出した改革への疑問点】(4)の画像
Jリーグの進むべき道は、もっと活発に議論されていいはずだ 撮影:中地拓也

 2023年シーズン、Jリーグは改革へと動き出す。各クラブ、さらには日本サッカーの将来を大きく左右し得る変化がもたらされるのだ。だが、その明確な理由や是非については、まだ議論になっていない。Jリーグの進むべき道について、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■正反対な米欧の考え方

 サッカーの世界は基本的には「弱肉強食」の競争社会である。強いチームは収益が増える。そして、その資金を使ってますます強くなる……。逆に、強化やクラブ経営に失敗すれば下部リーグに降格し、最終的にはクラブが消滅してしまうこともある。

 それが、サッカーの世界の考え方なのだ。

 一方、アメリカ(合衆国)のプロ・スポーツの考え方はまったくそれとは逆だ。

 各クラブの実力を接近させて「共存共栄」を図ることによって、リーグ全体を繁栄させるという考え方である。

 アメリカのプロ・スポーツは、サッカーのMLSも含めてウェーバー方式の「ドラフト制」(新人選手の指名精度)を実施している。つまり、最下位チームから順に新人選手を指名して独占交渉権を獲得するのだ。弱いチームから順に有望な新人選手と契約できるようにすることによって戦力を均等化するのだ。

 もちろん、アメリカのメジャースポーツの場合でもチームによっての戦力差は大きい。だが、“理念”としてはなるべく戦力を均等化させようというのだ。そのための方策が「ドラフト制」であり、また年俸の上限を決める「サラリーキャップ制」なのだ。

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