■スポーツ界と社会生活のねじれ現象

 ヨーロッパ諸国とアメリカの、この考え方の違いは考えてみると非常に興味深いものだ。

 なぜなら、ヨーロッパ諸国は(国によってもちろん違いは大きいが)、基本的には社会民主主義的な社会を目指している。高額の所得税を課して福祉政策を推し進めることによって“富の再配分”を目指す社会である。「大きな政府」による「高負担・高福祉」の社会だ。

 一方、アメリカは「自由競争」の社会だ。連邦政府は「小さい」政府が望ましいと、アメリカ国民は考えている。バラク・オバマ元大統領が推し進めた「国民皆保険」制度ですら、「社会主義的だ」と強く批判されたほどだし、国民は銃を持って武装する権利を持っている。

 だが、スポーツ界の考え方はそれぞれの社会とは正反対であり、ヨーロッパのサッカーは「自由競争」。アメリカのプロ・スポーツ界は「共存共栄」を目指しているのだ。

 ヨーロッパのサッカー・リーグでは経営や強化に失敗したクラブは降格して、最終的には消滅することすらあるが、アメリカのチームはどんなに弱体化してもリーグにとどまっていることができる。

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