■その5 先輩ペペ

 1991年夏、日本サッカーリーグ(JSL)の最終シーズンに向けて前年度チャンピオンの読売クラブにブラジルから穏やかな顔をした56歳の新監督がやってきた。ジョゼ・マシア。というより、ブラジルでは「ペペ」の名で知られる偉大なプレーヤーだった。

 左ウイングあるいはストライカーとしてブラジル代表41試合。1958年と1962年の2回のワールドカップ優勝メンバーであり、現役プレーヤーとして所属したクラブはサントスFCただひとつ。そう、ペペはペレより5歳年上で、ペレと並ぶサントスのシンボルであり、エースだった。ペレには遠く及ばないものの、サントスで記録した405ゴールは大記録であり、ペレに次ぐものだ。

 サントスという町は商業都市サンパウロの「外港」にあたり、港町として知られるが、実際にはサンビセンテ島という島に位置し、その東半分を占めている。そして島の西側の地域が「サンビセンテ」という町で、ペペはこの町で生まれ、9歳のときにサントスに引っ越した。サッカーはサンビセンテのクラブでプレーを続けていたものの16歳のときにサントスに移籍、そこでプロとなり、以後34歳で引退するまで750もの試合に出場した。ペレ以上にサントスで愛されたのは当然だった。

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