W杯直前のテスト成功

 だが森保監督はあわてなかった。慎重に少しずつメンバーを入れ替え、盛り返していった。第4戦のオーストラリア戦から6連勝、第5戦からは5試合連続無失点というこれまでの予選にもなかった強さの背景は、センターバックの吉田と冨安健洋、そしてボランチの遠藤を中心とした守備の固さをベースにしたものだったが、森保監督の采配もこの苦境のなかで冴えを見せ始める。オーストラリア戦では、それまでの4-2-3-1システムから4-1-4-1に変更、中盤を遠藤、守田英正田中碧の3人で構成することで攻守両面で試合を支配できるようにしたのだ。そして右MFの位置から伊東純也が得点を重ね、「救世主」の役割を果たした。

 予選突破後の最大の問題は攻撃陣の構成だった。就任当初から攻撃の軸は大迫だった。ワントップとしてボールを収めて周囲の選手を使う巧みさ、ヘディングの能力、圧倒的なキープ力は替えがたい存在だった。だが予選が終わると森保監督はなかなかコンディションが整わない大迫を外した。そして9月のアメリカ戦(デュッセルドルフ)で前田大然の1トップを軸とする前線からのプレスが成功すると、ワールドカップの基本的な戦い方が固まった。

 ワールドカップ直前のカナダ戦では、3バックの新しい展開、すなわち逃げ切りのための守備強化の3バックではなく、チームを超攻撃的にするための選手起用がテストされ、成功を収めた。

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