■空の上でのアクシデント
エルアルト空港は、標高4000メートル以上にあるので、通常より長い滑走路が必要というとんでもない空港です。離陸した飛行機から下を見ると、盆地の中に広がるラパスの家々の白熱電灯の黄色い灯りがまるで星空のように広がっていました。
搭乗した飛行機はドイツのルフトハンザのLH494便。フランクフルトからやって来て、ラパス経由でサンチャゴに向かう便で、朝にはサンチャゴに到着するはずです。ドイツの飛行機はとても近代的で明るく、また機内では英語が通じるのでホッとして僕はウトウトと眠りに落ちようとしていました。
しかし、旅先で安心していられるのは一瞬のことです。
機内アナウンスで「サンチャゴでは濃霧が発生しておりますので、当機は間もなくアントファガスタに到着します」と言っています。時計を見ると午前3時過ぎのことでした。
「アントファガスタって……、どこ?」
〔豆知識〕アントファガスタはチリ北部に位置し、チリ最大の産業である銅鉱山に支えられた人口30万人の太平洋に面した港町。かつてはボリビア領でしたが、1879年に起こった太平洋戦争で勝利したチリ領になりました。この結果、ボリビアは海岸部の領土を失って内陸国になったのですが、今でもボリビアには海軍が存続しており、ティティカカ湖の湖上で演習を行っています。