■ギリギリ合法のオッサンたち

 さて、EURO観戦が目的だったのですが、入場券の手配はまったくできていませんでした。ヨーロッパ域内の大会でしたから、日本で入場券を売るための代理店などはありません。それで、「現地に行けばなんとかなるだろう」と思ってやって来たのです。

 とりあえず、「スタィディオ・コムナーレ」に向かいました。

 トリノの2つのクラブ(ユベントスとトリノ)が共同で使用していたスタジアムです。その後、1990年のイタリア・ワールドカップの時に「スタディオ・デッレ・アルピ」が建設されてユベントスはそちらに移りました。一方、「コムナーレ」の方は、2006年に冬季五輪がトリノで開かれた時にメイン・スタジアムとして改装され、現在は「スタディオ・オリンピコ・グランデ・トリノ」となってトリノのホームとして使用されています。

 入場券は、スタジアムの周囲でいくらでも売っていました。

「いかにも」というオッサンたちが入場券の束を持って売っています。「ダフ屋だろうから、値段の交渉をしなければならんな」と思っていたら、どれも定価で売っているようです。後に知ったのですが、イタリアでは利権を持つ怪しげなサポーター団体に入場券が横流しされており、彼らはそれを売りさばいて利益を得ていたのです。つまり、売っているオッサンたちは法律的にはスレスレ合法の存在だったのです。

 さらに、どういうわけか、正規の入場券のはずなのに、何種類かのデザインが混在しています。不思議なことばかりでした。

  1. 1
  2. 2
  3. 3