■今大会の傾向は続くか
もっとも、代表チームの準備ができなかったのはヨーロッパ諸国だけではない。サウジアラビアやカタール、メキシコなど、国内組が多いチームはしっかりと準備を行って大会に臨むことができただろうが、多くの国では代表チームの主力級はヨーロッパのクラブで活躍しているのだから、準備期間の不足はヨーロッパ諸国と同じはず。
それでも、ヨーロッパの強豪国を倒すことができたのだ(逆に、準備期間があったはずの上記のような国はラウンド16進出を逃している)。
だとすれば、ヨーロッパ諸国と他大陸の違いは「代表チーム」あるいは「ワールドカップ」というものへの取り組み方の差だったのかもしれない。
UEFAチャンピオンズリーグというクラブチームの世界最高峰の戦いがあり、また大陸別選手権であるEUROという非常にレベルの高い国際大会があり、さらにネーションズリーグも発足したヨーロッパ諸国にとって、代表チームやワールドカップの重要性が他の大陸諸国ほど高くないのは間違いない。そんな意識の差が、「ヨーロッパ相手になんとか一泡吹かせてやろう」と真剣に取り組んでくる他大陸相手の試合で出たのかもしれない。
ヨーロッパ諸国と他大陸との差が接近したかのように見えた2022年カタール大会だったが、果たしてそれが実際の趨勢を示したものだったのかどうか。それは、通常の6月開催となる2026年大会を見てみないと分からない。もっとも、次期ワールドカップは48か国が出場する大会となり、大会のフォーマットもこれまでと違うものとなる見込みであり、従来の大会とは比較にならないかもしれないのだが……。