カタールワールドカップアジア最終予選を戦っていたサッカー日本代表は、「戦術伊東」とか「戦術三笘」と言われたりもした。彼らの「個」の力に寄りかかり、チームとしての崩しのパターンが見られないことへの批判だった。
個人の「質的優位」を強みとするのは、W杯の出場国にも見られた。分かりやすいのはアルゼンチンだろう。
クロアチアとの準々決勝では、リオネル・メッシが先制のPKを決め、3点目のアシストを決めた。勝利を決定づけたアシストは、今大会で一躍脚光を浴びたクロアチアのグヴァルディオルを翻弄するものだった。
メッシの「個」の力が存分に発揮されたシーンだったが、彼のドリブル突破に合わせてフリアン・アルバレスがゴール前にポジションを取っている。さらに言えば、右サイドのスローインをグヴァルディオルの圧力を受けながら、メッシへつないだのもJ・アルバレスだ。
メッシという「個」が存在しなければ、クロアチア戦の得点は生まれなかったかもしれない。同時に、「こうなったらこうする」というイメージの共有がなされていたのも確かだろう。
J・アルバレスがハーフライン手前から単独で持ち込み、個人で決め切った2点目も、背番号9にパスをつないだのはメッシである。「メッシがボールを受けたらどう動くのか」について、アルゼンチンの選手たちに迷いはないのだ。