■森保監督はこれまでもギャンブル的な采配を見せてきた

 ギャンブル的な要素の強い采配は、今回が初めてではない。

 2021年10月のW杯アジア最終予選第4戦で、森保監督は周囲をアッと驚かせた。第3戦のサウジアラビア戦まで採用していた4-2-3-1から、4-3-3へ変更した。遠藤航柴崎岳のダブルボランチから、遠藤をアンカーに置き、守田英正田中碧とインサイドハーフに立たせた。

 0対1で敗れたサウジアラビア戦は、柴崎のパスミスが失点を招いていた。とはいえ、守田と田中は最終予選初先発である。遠藤と守田はダブルボランチを組んだことがあり、遠藤と田中は東京五輪でともにプレーした。守田と田中は、川崎フロンターレのチームメイトだった。すでに確立されたコンビネーションはあったものの、最終予選の大一番である。

 3試合を終えてサウジアラビアとオーストラリアに勝点「6」の差をつけられており、このオーストラリア戦を落とすようなことがあると、W杯にストレートインできる2位以内の確保が難しくなる状況だった。

 さらに言えば、アウェイでサウジアラビアと戦ってから5日後である。移動日と前日の最終調整を除けば、戦術的なトレーニングに費やせたのは2日間だけだった。

 リスクはいくらでもあげることができ、リターンはすぐに見つからなかった。それでも、森保監督は4-3-3への変更に踏み切り、オーストラリア相手に2対1の勝利を手繰り寄せた。

 指揮官を後押ししたものは何だったのか。

「覚悟」だと思うのだ。

 最終予選を突破しなければならない。カタールW杯の舞台に立たなければならない。そして、就任直後から公言してきた「W杯で過去最高の成績を目ざす」という目標を、達成しなければならない。

 どんな批判も受け止め、結果責任を背負い、勝つために最善の策を選ぶ。その「覚悟」があったからこそ、森保監督は大一番で動くことができたのだろう。

 カタールW杯で見せたシステム変更にも、同じことが言える。勝つためには、リスクを冒さなければいけない。覚悟を決めなければいけない。

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