２人合わせて「ワールドカップ２５大会」を取材した、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生。２０２２年カタール大会でも現地取材を敢行している。古きを温め新しきを知る「サッカー賢者」の２人がカタール・ワールドカップをあらゆる角度から語る！
■クロアチアのＰＫ勝ちに思うこと
驚異的な粘りを見せてＰＫ戦の末にクロアチアがブラジルを破ったゲーム。多くの人がそうだっただろうが、僕もついついその戦いに日本代表の姿を重ねて見てしまった。
「ＰＫ戦」で準々決勝進出を阻まれた日本だったが、クロアチア戦では勝利の可能性も大いにあった。それなら、もし日本代表がブラジルに挑戦することができていたら、日本はクロアチアのように勇敢にブラジルに立ち向かって巨人を倒すことはできただろうか？
大住さんは「クロアチアとの差」という言葉を使った。つまり「クロアチアの方が日本より実力は上」という意味なのだろう。
そうだろうか？ 日本対クロアチア戦はほぼ互角の試合だった。ボール支配率ではクロアチアの方が上回ったが、それは戦い方の違いによるもの。シュート数（枠内シュート数）、ＣＫの数などでは互角の数字が残っている。
だから、正確に言えば「クロアチアとの差」ではなく、「クロアチアとの違い」と言うべきだろう。
日本よりクロアチアの方が明らかに勝れていたのはルカ・モドリッチ、マテオ・コヴァチッチ、マテオ・ブロゾヴィッチという３人のＭＦの経験値を含む構成力。そして、ドミニク・リヴァコヴィッチというＧＫの存在。日本戦でも、ブラジル戦でも何度もチームを救い、そしてＰＫ戦での勝利をもたらした。
リヴァコヴィッチというＧＫを擁し、４年前のロシア大会でＰＫ戦で勝ち上がってきた経験もあるので「ＰＫ戦に持ち込めれば勝てる」という自信が彼らの戦いに安定感をもたらしていた。
そして、何と言っても日本との１２０分の試合を戦い抜いて中３日で迎えたブラジル戦で最後まで走り切った不屈の精神。３７歳のモドリッチが延長後半になって相手に絡まれながら素晴らしいボールを供給したことが同点ゴールにつながった。
