サッカージャーナリスト・後藤健生のカタールワールドカップ取材は終了した。多くの材料を持ち帰ってきたが、帰途にも取材はある。スリランカでは蹴球放浪家として、懐かしい風景に出会っていた。
■カタールを離れる
「蹴球放浪記」と称して過去の思い出話を書かせていただいていますが、「放浪」とは本来は「目的もなく彷徨(さまよ)うこと」のはずです。しかし、僕の行動はすべてサッカーの試合を見るという明確な目的を持っているもので、その時に出会った失敗談や恐怖体験、感動体験などについて書いてきたのです。
今回は、そういう意味で、本当の「放浪」のお話です。
カタールのワールドカップはいろいろな事情があって、まるまる1か月行っているわけにいかなかったので、ラウンド16までを見て12月6日の夜の便で帰国することにしてしました。
今回はドーハ都市圏で全試合が開催されるので、FIFAが「グループリーグの間は1日に2試合の取材申請可」と言ってきたのです。実際開幕戦から毎日2試合ずつ観戦し、それにラウンド16の4試合を合計すると全部で29試合。たった17泊で29試合観戦できたので、大変に効率が良い大会になりました。
それに対して、準々決勝以降は試合のない日もあるので、それほどたくさん試合を見ることはできません。そこで、僕は大会後半の優勝争いではなく、大会前半に試合を見続けることを選んだのです。