■大会史上初のワンタイム・スタジアム

 その視点で今大会圧倒的な存在感を誇るのが、「スタジアム974」というドーハ市内につくられた新スタジアムだ。収容は4万4089人。デザインは「スタジアム・コンセプト」の表れと言うことができるが、このスタジアムはそのコンセプトが大胆であり、しかも斬新なのだ。

 「ワンタイム・スタジアム」である。

 完成は昨年11月。このワールドカップではラウンド16までの7試合に使われ、大会が終わると完全に取り壊されて更地になることになる。まさに「砂上の楼閣」である。解体された後、鉄骨など建設資材はアフリカなどに寄付されて、そこで新しいスタジアムに生まれ変わるとされているのだ。

 これまでのワールドカップでも、「仮設スタンド」はいくらでもあった。ワールドカップ基準に合わせるため、収容数を一時的に増やすためだ。最近では、2018年ワールドカップ・ロシア大会で日本がセネガルと対戦したエカテリンブルクのスタジアムが、巨大な仮設スタンドをもっていた。

 ワールドカップ後の「ダウンサイジング」は他でも行われ、今回も決勝戦の行われるルサイル・スタジアム(収容8万8966人)も4万人規模に縮小されるという。

 だが、「ワンタイム」と割り切ったワールドカップ・スタジアムは史上初ではないか。そのコンセプトがまずすごい。この考えは大会招致の段階からあった。「ドーハ・ポート・スタジアム」という仮称で、大会後には完全解体して「座席は開発途上国に移す」としていたのだ。だが当時はこれほどまでに徹底した計画ではなかったようだ。

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