■劣勢を変える一振り
そして、前半の30分を過ぎるころからメキシコのプレッシングの激しさが急に失われてきた。試合開始からハイプレスを敢行したことで疲労が溜まったのであろうか。あるいは、アルゼンチン選手との1対1の攻防で疲弊したのであろうか……。
メキシコは前半終了間際にベガが2本のシュートを放ったのを最後に(1本は直接FK)、後半に入ると攻撃力が大きく低下してしまった。
そして、後半に入るとアルゼンチンがようやく攻撃に出た。もっとも、中盤でのパスの回りの遅さが解決されたわけではない。ただ、メキシコのプレッシングが弱まっただけだ。
そして、アルゼンチンも攻撃には出るのだが、なかなか決定機を作れない。大きなチャンスといえば、52分に正面のFKをメッシが狙ったくらいのものだ。
ところが、そうしたゲームの流れを“メッシの一振り”が変えてしまったのだ。
とくに、アルゼンチンが決定機を作ったわけではないし、メッシのシュート自体も「ゴラッソ」という類のキックではなかった。ゴール正面付近20数メートルのところから放った、コントロールされたメッシのシュートは「ここしかない」というコースを通って右下隅に決まった。
狙い通りのコースにシュートを放つことができるだけのキックの技術。そして、シュートを放つタイミングの絶妙さ。第1戦でロベルト・レヴァンドフスキのPKを止めて見せた名GKギジェルモ・オチョアもメッシのこのシュートには反応できなかった。