■幼少期から育む武器

「これでは、ヨーロッパの強豪国と対戦したら、ひとたまりもないのではないだろうか」。僕はそんなことを考えながら、試合の経過を見ていた。

 アルゼンチンは無敗で南米予選を勝ち抜き、また現在のコパアメリカ・チャンピオンである。南米大陸ではブラジルと並んで無敵の存在だ。だが、ヨーロッパ・サッカー連盟(UEFA)がネーションズリーグなる新たな大会を立ち上げたおかげで、南米の強豪チームと言えども、ヨーロッパのチームとの対戦ができなくなっているのである。

 メキシコのプレスは相変わらず、強烈だ。そんな展開を見ていると、この試合もメキシコが勝利するのではないか。そんな気もしてきた。

 メキシコ代表の監督はアルゼンチン人のヘラルド・マルティーノ。母国のサッカーの問題点を徹底的にえぐってきたわけである。

 アルゼンチンが勝ち続けてきたのは、一つにはヨーロッパとの対戦が少なかったことが原因である。そして、もう一つの理由はメッシの決定力に頼ってきたからなのである。

 さて、メキシコとの試合だが、メキシコの激しい攻撃にさらされながらも、アルゼンチンはしっかりと守り続けた。いわゆる「球際」の強さのおかげだろう。

 アルゼンチンの育成段階では、とにかくボールの奪い合いが大切にされる。少年たちのトレーニングでは多少の(いや、相当な)ファウルをしても、コーチたちは試合を止めたりはしない。とにかく、延々とボールの奪い合いを続けるのである。

 そんな中から育まれた「球際」の強さ。これを武器にして、アルゼンチンはメキシコの攻撃をしのぎ切った。

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