■奇跡的な速さの観客の帰宅
ドーハのメトロは、試合前には便利でも、試合後、一挙にファンが帰途につくときには機能しないのではないか――。大会前には、そんな懸念が広がっていた。3分おきに運行されているとはいえ、「緑ライン」と「ゴールドライン」はわずか3両連結(赤ラインは6両)。とてもではないが、9万人(ルサイル・スタジアム)、4万人(他のスタジアム)規模のファンを運びきれないだろうと心配されたのだ。
だがフタを開けてみると試合後のメトロへの観客誘導は実に見事だった。メトロ駅と直結する5スタジアムでは、スタジアムからメトロ駅への広大な敷地内に何回も折れ曲がる誘導路をつくってある。通常なら10分もかからずに歩けるところを20分以上かかるが、1か所に止まって待つのではなく歩き続けることができるため、ファンはあまりストレスを感じずに済むのだ。
おまけに、ところどころに「メトロ、ディスウェイ」と大音量で流す拡声器をもったボランティアが立っているので、迷う心配もない。
その結果、ほとんどのスタジアムで、観客席を出てからほぼ30分以内には目的地に向かって走るメトロの車中にいることになる。埼玉スタジアムでの日本代表戦で6万人がはいったときには、浦和美園駅で1時間も待たされることもある。それを考えれば奇跡的な速さと言える。もちろん込んではいるが、東京のラッシュ時のようなぎゅうぎゅう詰めのような状態にはならない。