良識が効かずに選ばれた最低評価の候補地【開幕直前に改めて考えるカタール・ワールドカップの問題点と利点】(1)の画像
カタール開催には、多くの疑惑が付きまとう 写真:渡辺航滋

 カタール・ワールドカップ開幕まで、1週間を切った。世界中が楽しみにする大会だが、単なるお祭りで済ませてはいけない問題がある。開幕直前だからこそ知っておくべき問題点と利点を、サッカージャーナリスト・後藤健生が突く。

FIFA前会長の「今さら」発言

 国際サッカー連盟(FIFA)のゼップ・ブラッター前会長が、スイス・メディアのインタビューで「ワールドカップのカタール開催は間違いだった」と発言したと伝えられている。

「カタールはワールドカップを開くには小さすぎる。自分自身はアメリカに投票したが、ヨーロッパ・サッカー連盟(UEFA)のミシェル・プラティニ会長がフランスのニコラ・サルコジ大統領の要請でカタール支持に回った」といった趣旨のようだ。

「なにを、今さら」という発言である。カタール大会開催が近づくに連れて、カタール開催に対する批判の声が高まってきたのに乗っかった非常に軽い発言のように聞こえる。

 サルコジ大統領の話(カタールがフランス政府に働きかけた)という話が本当のことなのかどうかは知らないが、2010年のカタール開催決定から10年以上も経って大会開催が間近に迫った時に持ち出すべき話ではなかろう。

 カタールに開催権が与えられたのが、カタールの汚いお金によるものであることはおそらく間違いないだろう。たとえ、ブラッター前会長自身がカタールから金銭を受け取っていなかったとしても、FIFAを金の力によって影響されやすい組織にしてしまったのは、2010年までに10年以上会長の座に君臨し、ジョアン・アヴェランジェ会長時代から事務局長として様々な権限を握っていたブラッター前会長自身だったのではないか。

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