■サッカーは人々をつなぐ
「私たちが考える地方クラブのスタジアムの理想の姿とは、そこで子どもたちが自己肯定感をもち、ヴァンフォーレ甲府の選手たちのふるまいに接し、あこがれて、ああいう選手、ああいう人間になりたいと思うこと、そして大人たちも、近所の皆さんが連れ立ってスタジアムにくることで、近年希薄になってきているつながりを再確認できるという、コミュニティーの重要な社会インフラではないでしょうか」
天皇杯優勝の興奮もさめない10月19日、新しい「フットボールスタジアム」への期待をそう表現したのは、現在社長としてヴァンフォーレ甲府を牽引する佐久間悟だ。
「そのスタジアムがあることによって、自分たちの存在意義や価値を再確認する。そういうものを背負って選手たちが戦って、やっぱり俺たちと同じ価値観のクラブは他のクラブより正しいんだっていうのを証明していけるような、そんな循環になればいい」
また、佐久間は、少子化による人口減少のなか、外国人労働者が増えるこれからの日本の社会にとって、サッカースタジアムはより大事な場所になるのではないかとも語る。
「サッカーは世界共通の言語で、コミュニケーションツールだと思うんです。サッカーを使えばいろいろな人が仲良くなれる。小さな娯楽でも2週間に1回エンターテインメントがあって、そこにちょっとした空間があって、仲間との連係連帯ができて、それが地域と地方の特徴になるのではないか―」
「地方創生の旗頭としてのスタジアム、教育や健康、文化、芸術、経済にも寄与できる。そして防災にも。サッカースタジアムは、そういう施設、社会インフラになると思うのです」
ヴァンフォーレ甲府というクラブが、プロサッカークラブがもつ社会的ポテンシャルを十二分に発揮するには、是非とも誰もが誇りに思い、仲間と集いたいと思うスタジアムがほしい―。天皇杯優勝によって、ヴァンフォーレ甲府は山梨県の社会のなかでそうした役割に進む段階にきたのではないか。
最後に、佐久間はまっすぐ私の目を見てこう語った。
「ヴァンフォーレ甲府は、人びとをつなぎ、“コウフク”をもたらす存在でありたい」
山梨県、甲府市という地域にとって、新スタジアムの建設に、いまほどふさわしい時期はない。