サンフレッチェ広島が、1週間で地獄と天国を味わった。天皇杯決勝ではJ2のヴァンフォーレ甲府に苦杯を喫したが、翌週のルヴァンカップ決勝では初戴冠を成し遂げた。似たような展開ながら、2つのファイナルの明暗を分けたものは何なのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が勝負の綾をひも解く。
■勝敗の分け目となったPK
サンフレッチェ広島にとって、まるで双子のようにそっくりな試合だった。
10月16日に横浜・日産スタジアムで行われた第102回天皇杯全日本選手権大会決勝と同22日に東京・国立競技場で行われたJリーグYBCルヴァンカップ決勝である。
どちらの試合でも広島は対戦相手に先制を許し、リードされたままゲームの終盤を迎えた。そして、天皇杯では84分、ルヴァンカップでは90+6分という遅い時間にようやく追いついたのだ。
2つの試合の違いは、天皇杯ではせっかく獲得したPKをヴァンフォーレ甲府のGK河田晃兵にストップされてPK戦負けにつながったのに対して、ルヴァンカップではピエロス・ソティリウがきっちりと決めて優勝を決めたことだけだった。
ちなみにGKの河田はPKをストップしたことによって、ハンドの反則でPKを献上してしまったチームのレジェンド山本英臣を救い、ソティリウはPKを決めたことによって、バックパスのミスでセレッソ大阪の先制ゴールを“アシスト”してしまったキャプテンの佐々木翔を救った。
2つの試合が双子のような相似形となったのには明らかな理由がある。
それは、対戦相手が「広島対策」をしてきたことによって広島の攻撃があまり機能しなかったからだ。