Jリーグで、前代未聞の事態が勃発した。ロアッソ熊本は21日、ホーム最終戦となる23日の当日券を「販売中止」にすると発表した。
熊本は昨季、J3を制してJ2へと戻ってきた。さらには勢いを落とすことなく、上位争いを続けてきた。自動昇格は逃したものの現在は4位につけており、すでにプレーオフ出場を確定。最終節で順位が入れ替わる可能性はあるが、プレーオフ1回戦で5位の大分トリニータと対戦することが決まっている。J1に昇格すれば、クラブ史上初の快挙だ。
その上り調子の熊本が、うれしい悲鳴を上げている。今季リーグ戦最終節となる23日の横浜FC戦では、これまで経験しなかったような来場者数が予想されている。クラブはついに、「チケット販売状況から、当日のスタジアム内外の大変な混雑、周辺の道路状況やアクセス面等を鑑み、ご来場される皆様ならびにスタジアム周辺に及ぼす影響を考慮し、本試合の当日券販売を中止することにいたしました」と発表。SNS上でも情報が次々と拡散されている。
前売りの段階で売り切れて当日券が販売されない状況になることは少なくない。クラブの説明にあるように、それ以外の理由で、つまりは、まだチケットが余っている状態で販売を行わないというのは極めて珍しいことだ。
ただし、喜んでばかりもいられない。この試合は、単なる地元の盛り上がりとは言えないからだ。
鍵は対戦相手の横浜FC、しかもひとりの選手が握っている。その左足で多くのサッカーファンを魅了してきた、中村俊輔だ。
希代のレフティーは今週、今季限りでの現役引退を発表した。その宣言は横浜FCのファンのみならず、日本中、それどころかかつてプレーしたセルティックなど、世界中のサッカーを愛する人々を驚かせ、悲しませた。
中村は前節のホーム最終戦となるツエーゲン金沢戦で交代出場。当然、横浜FCの今季最終戦となる熊本戦に対しても意欲を示している。