■「カテナチオ」の面目躍如

 さらに驚くべき記録がある。同じ1969/70シーズン、フェネルバフチェが30戦して17勝10分け3敗という圧倒的な成績でトルコ・リーグで優勝を飾っている。そのゴール数が、得点31、失点6(!)というから驚く。1試合平均失点0.200は、おそらくプロの世界では「世界記録」ではないかと思われる。得点わずか31(1試合平均1.033点)で優勝したというのもすごい。この31得点は、フェネルバフチェのトルコ・リーグでの最少得点記録だという。

 ちなみにこの1969/70シーズン終了後に行われたワールドカップ・メキシコ大会で、アルベルトーシはイタリアのゴールに立った。イタリアはグループリーグではスウェーデンに1-0で勝った後、ウルグアイとイスラエルにはともに0-0で引き分け、1勝2分け、得点1、失点0という「カテナチオ」の面目躍如の試合を見せ、堂々とグループを首位で通過した。

 だが決勝トーナメントにはいると、イタリアはまったく別のチームになる。準々決勝でホスト国のメキシコに4-1で大勝すると、準決勝では西ドイツと信じ難い「ノーガードの打ち合い」を展開して4-3の勝利。決勝では先制したもののあっさりと逆転されてブラジルに1-4で屈した。そして長かったイタリア・セリエA「カテナチオ」の時代も、このワールドカップを期に1970年代になると通常の「1試合2~3点」の時代になっていく。

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