■反対側から流れてきた催涙ガス

 こんな“過剰な”警備をする理由もある程度は理解できました。

 というのは、僕は同じ2001年の4月に『サッカー批評』の取材でアルゼンチンを訪れていたのですが、その時に「スーパークラシコ」ボカ対リーベルプレートの試合を取材していたからです。熱狂的なインチャ(サポーター)たちの入場の様子を見ていると、数十人ずつ集められて警察から徹底的な身体検査を受けています(すぐに別の場所に連れていかれてしまいます)。そして、彼らの服や下着の中からは大量の武器が出てきました。

 とにかく、僕たち「日本人ビジネスマン様御一行」は南側のゴール裏の席に入りました。大量の偽チケットが出回っているらしく、かなり混乱はしましたが、無事にキックオフ。

 ところが、試合が始まって8分が経過したころ、僕たちの席の反対側、つまり北側で異変が起こりました。選手たちが突然立ち止まってプレーを止めてしまったのです。それまで騒いでいた観客たちも大声を出すのを止めてザワザワとしています。その不気味な「波」は北側から南に向かって広がってきました。そう、催涙ガスが流れてきたのです。

 後で聞いたところによると、スタジアムの北側に入場できなかったインチャたちがいて、外で騒ぎ始めたんだそうです。それに対して、警察側が催涙ガスを発射。そのガスが、スタジアム内に流れ込んだのだそうです。

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