Jリーグが変えた取材の常識

 弘報担当者だけではありません。選手や監督もおごってくれます。

 コーヒーを飲みながら、あるいは食事をしながらインタビューをすれば、飲食代は必ず彼らが払ってくれます。高麗大学の金鍾夫(キム・ジョンブ)監督(元韓国代表)を取材した時は、監督行きつけの饅頭(マントゥ=水餃子)屋に連れて行ってもらったのですが、冬の寒い日だったので熱々の饅頭がとても美味しかったのを覚えています。

 Jリーグが開幕した1990年代、日本ではJリーガーが映画スター並みに扱われた時代があり、インタビューをするのに高額の謝礼が必要になっていました。また、ヨーロッパの選手や監督のインタビューをする時にも日本のメディアが高額の謝礼を払ったので、ヨーロッパでも日本からの取材だというと謝礼を要求するようになっていました。

 そんな時代に、韓国のサッカー界には「取材に来てくれた記者に対して食事や酒をおごってくれる」という大変に麗しい風習がまだ残っていたのです。「食事代が浮く」というのもありがたいですが、食事や酒を共にすることで意思疎通が図れ、オフレコでいろいろ面白い(非公式の)話を聞けるというメリットもあります。

 もっとも、本当を言えば(建前を言えば)、取材者と取材対象者が親しくなりすぎて、いわゆるズブズブの関係になるのは望ましいことではありません。取材者と取材対象の距離感というのは、なかなか難しいものなのです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3