■足りない「したたかさ」
もちろん、それで喜んでばかりはいられない。
戦術的なバリエーションが豊富で知識も持っているのだが、それを実際の試合の中でどう生かしていけるかというのはまた別問題なのだ。
冨樫監督の言葉を借りれば「知識は豊富だが頭でっかち」ということになる。
たとえば、静岡ユースとの試合。1点を奪って試合は終盤に差し掛かっていた。この時間帯にどのようにプレーして、リードを確実に勝点3に結びつけるか……。試合の最終盤に相手の選手が倒れて試合が中断した場面があったのだが、その後、相手にボールを渡すのはよいとしても、そのままプレッシャーをかけずに引いてしまったことについて冨樫監督は「したたかさが足りない」と指摘している。
たとえば、世界大会(FIFA Uー20ワールドカップ)出場権がかかったAFC Uー20アジアカップ(来年3月にウズベキスタンで開催)の、まさに世界への切符を懸けた準々決勝でこんな失点の仕方をしてしまったら悔やんでも悔やみきれないことになる。新型コロナウイルスの影響で、国際経験を積む機会が少なかった今の若い年代の選手たちにとっては、世界大会を戦うことは他の年代の選手たち以上に重要なのだ。
そういう意味では、静岡ユースは若い世代の日本代表に最高のレッスンを与えてくれたことになる。
こういうミスを減らすには、強い相手との対戦経験を重ねるしかない。そうした経験を積むためにも、世界大会に出場して1試合でも多く、いろいろなタイプの相手と戦ってほしいのである。