■ホヤをロゼ・ワインとともに味わう

 さて、2003年にフランスで毎年夏に開かれているトゥーロン国際トーナメントを観戦に行ったことがあります。各国のユース代表が出場する大会で、最近は「モーリスレベロ・トーナメント」と呼んでいるようですが、昔は本当に地中海に面した港町トゥーロンを中心に開催されていました。2003年には同時期にフランスでコンフェデレーションズカップもあったので2つの大会を見ることができました。

 ある夜、日本から取材に来ていた何人かで連れだってトゥーロンの海岸に出て、この地域で有名なロゼ・ワインを楽しんでいました。

 ブイヤベースが出てきました。

 魚介類や野菜を投入し、さまざまなハーブやニンニクで香りをつけて、サフランで赤い色を付けた南フランスの鍋料理です。入っている食材は、もちろん地元の海で採れた地魚ばかり(のはず)です。

 ブイヤベースの具を順番につついていると、何かとても不思議なものが入っていました。独特の臭いがあります……。

「あれっ、これってもしかしてホ・ヤ?」

 そう、なんとブイヤベースにホヤが入っていたのです。

「人間はその土地の魚介類を(毒性がなければ)何でも食べる」ということは頭では理解しているつもりでしたが、南フランスの海岸で、三陸や釜山のイメージが強いホヤと出会い、宮城の地酒や韓国の焼酎ではなく、プロヴァンス産のロゼ・ワインとともに味わったのはやはり驚きでした。

 本当に、ヒトというのは何でも食べてしまう恐ろしい生物です!

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