大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第95回「増える一方の『ベンチスタート』」(4)「世界最強国決定戦」に進出の日本企業など止まらない進化の画像
木製のフレーム、「レカロ」の椅子。新国立競技場のチームベンチは、世界一豪華だ。 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「チーム役員、交代要員および交代して退いた競技者の座席」―。

■移動式ベンチの値段は?

 そう、現在では、できるだけ観客のじゃまにならず、ピッチの高さから試合を見ることができる透明なボードを用いた移動式のチームベンチが広く世界に普及している。陸上競技型のスタジアムではベンチをトラックの上に置くので、下にトラックを保護する人口芝などを敷き、その上にこうしたベンチを設置する。

 ではこうした移動式のチームベンチはいったいいくらぐらいするのか? スポーツや公園の施設・用具を扱っている(株)津村製作所のホームページを見ると、Jリーグクラスまではいかないが、観客を入れて行う試合で使う移動式のチームベンチ(16人用)は税抜で1チーム分が480万円。3人用の「審判ベンチ」は150万円だから、合計1110万円。消費税を加えると、1221万円にもなる。

 一方、プロが使うスタジアムで使われているチームベンチは、椅子がどんどん豪華になっている。先陣を切ったのは高級スポーツカーのシートとして知られるドイツの「レカロ」である。腰の痛みに悩んでいたフリーデル・ラウシュ監督はベンチに座らず、自動車から外したシートを持ち込んで座っていた。それを見た「レカロ」社が、カイザースラウテルンの真っ赤なシートにクラブエンブレムを入れた「レカロ」のチームベンチを提案、1995年に設置されたのが始まりだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3