■名将オシムが用いた手段

 やはり、新しいコンセプトを取り入れるには、その監督のやりたいサッカーに適合した選手、あるいはその監督のコンセプトをよく理解している選手を導入することが何よりも近道だ。

 イビチャ・オシム監督は2003年にジェフユナイテッド市原(当時)にやって来た。

 オシム監督といえば「走るサッカー」だ。ボールを奪ったら、ポジションに関わらずに攻撃のために走り出すことが求められる。「水を運ぶ選手」という言葉で象徴される「よく考えて走る選手」が重用された。

 しかし、オシム監督がやって来た2003年シーズンには、まだ選手たちの動きはぎごちなかった。選手たちは監督に言われ通りにたしかに走っているのだが、「どのように走ればいいのか」、あるいは「何のために走るのか」を選手たちがまだよく理解できていなかったからだ。

 しかし、就任から1年も経つと選手たちは、実に自然に動き出すことができるようになっていった。短い時間で、選手たちに新しいコンセプトを落とし込んだあたりが、「名将」の「名将」たる所以なのであろう。

(3)へ続く
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