そうして掴んだ勝利に、当然、アルベル・プッチ・オルトネダ監督は「選手たちには前半と同じプレーを求めていた」と満足しなかった。
夏にはどうしても運動量が落ちてしまう、ということも、ボールを相手に渡して受ける状態と、自分たちでボールを保持する状態ではどちらが効率が良く体力を管理できるか、ということを考えると、しっかりと成熟すれば後者に軍配が上がりそうだ。
アルベル監督はその大切さに「ボールの価値」という表現を使った。そして「45分だけでなく、90分(ボール・スタイルを)保持できるように、引き続きトレーニングの中で選手たちを説得していきたい」と語り、「選手たちにはあらためて、最も素晴らしい守備の仕方はボールを保持することだ、と理解してほしい」とした。
その言葉で個人的に連想したのは、3連覇していた時のサンフレッチェ広島の試合だった。前半はボールを動かしながら無難に時間を進め、0-0で迎えた後半にゴールを奪ってそのまま勝ちきる、という試合巧者ぶりが印象強い。もっともそれは、前半にゴールを奪い、後半にボールを保持して試合を終わらせる、というこの日の理想の展開とは逆ではあるが、受ける側に回らなくとも守備をする時間がある、という部分は近そうだった。
アルベル監督は「もちろん、右肩上がりの継続的な成長を望むが、さまざまな要因によってそうはならないものだ。今後も、良い試合もそうではない試合もあるだろう」と就任1年目のチームの現在地を冷静に見ている。ボールを保持し続けることも「今季の初日から伝え続けている。引き続き伝えたい。シーズン後もあらためて繰り返し伝えたい」と簡単には行かないことも重々承知だ。