■世界的人気拡大への最後のひと押し

 イングランドのフットボール・リーグは、また、「リーグ・システム」にアメリカの野球にはなかったもうひとつの重要な要素を付け加えた。昇格と降格である。リーグ創設から5シーズン目の1892/93シーズンに、12クラブからなる2部リーグを始めたのだ。

 1888年にフットボール・リーグがスタートし、たちまち人気を独占した。毎シーズンのリーグ加盟チームは審査で決められることになっており、当初、その門は非常に狭かった。一日も早く「リーグ」システムでプレーしたいクラブは、自分たちで新しいグループをつくるしかないと判断した。それが1889年に誕生した「フットボール・アライアンス」である。「アライアンス」もまた、「リーグ」や「ユニオン」と同様、「連盟」を意味する言葉である。

 だがマグレガーのような優れたリーダーを欠く「アライアンス」は運営が粗雑で、問題も多かった。1892年、マグレガーはこうした「分裂状態」を終了させようと、在来のクラブを説得、1部を前年の14クラブから16クラブに増やすとともに、12クラブによる2部をつくることにしたのである。そして「昇格と降格」のシステムもつくった。

 「昇格と降格」は、やがてプロのトップリーグから地域、都市、地区など、ひとつの国のサッカーを網羅する大きな「ピラミッド」組織につながり、サッカーという競技の世界的普及に大きく寄与するもうひとつの偉大な発明となる。

 プロ選手にしっかりとした給料を支払うために安定した試合日程が必要だった。そのために創出された「フットボール・リーグ」。先覚者たちは、そこに勝ち点システム、昇格と降格のシステムを付け加え、「リーグ」をサッカーという競技を世界の隅々まで行き渡らせる最も重要なシステムとした。サッカーに対するこれほどの貢献は、他にはあまり見当たらない。

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