大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第93回「リーグ・システムはサッカーの基本」(1)カップ戦からの派生を誘発したプロ選手の誕生の画像
豊かな歴史があってこそ、現在のサッカーがある

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカーで最も重要なもののひとつ。

■サッカーの基本形

 昨年1月に大々的に発足が発表され、またたく間に挫折した「欧州スーパーリーグ」構想。だがその実現への動きは水面下でいまも続いている。スペインのレアル・マドリードを中心とする主唱者たちはさまざまなアイデアを練り、構想に激しく反対している欧州サッカー連盟(UEFA)を抱き込もうとしている。

 彼らの立場になれば、当然のことかもしれない。強いチームは、強いチームとだけプレーしたい。弱いチームと対戦しても、クラブの収益は上がらないからだ。

 現代の欧州のトップリーグでは入場料収入は「二次的」なものでしかない。クラブの収入の多くをテレビ放映権収入が占めているからだ。しかし放映権収入は観客席がガラガラのリーグやクラブには集まらない。高い関心を集める(観客が押しかける)試合を続けることがクラブの存立の基盤であることは、不変の原則だ。

 「強いチームとだけやりたい―」。そのモチベーションは、サッカーという競技を世界に普及させた最大の要素である「リーグ戦」を生んだ。国内の強豪同士が、シーズンを通じて定期的に、そして継続的に対戦し、チャンピオンを決める―。そのスリルと熱狂が、サッカーの世界的人気を支えている。

 そしてまた、「リーグ戦」というシステムは、負けたらそこで終わりではなく、勝っても負けてもコンスタントに一定数の試合をこなすということで、若年層からシニアまで、サッカーを楽しみ、そして「ゲーム・練習・ゲーム」というサイクルのなかで選手としてチームとして成長していくために欠かせない「基本形」となっている。

 では、リーグ・システムはどう生まれたのだろうか。今回はその話である。

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