■女子W杯審判への選出

 女子1級、そして国際主審として忙しく活動するようになってからも、彼女は私のチームの中心選手であり続けた。「ケガをしてはいけないからいいかげんに選手はやめたら」と、審判指導者や先輩たちからかなり言われたらしいが、時間が重複しない限り、クラブの練習や試合に参加し続けた。2016年のFIFA U-17女子ワールドカップ(ヨルダン)や2017年のユニバーシアード(チャイニーズ・タイペイ)をはじめとした海外での大会に参加するため長期間休むことはあったが、選手であることはやめなかった。

 2019年にFIFA女子ワールドカップ(フランス)への出場が発表された後も、彼女は平然とクラブの練習や試合に参加し、ボランチとして、ときにハードなプレーも辞さなかった。私のほうから、「ワールドカップが終了するまで、公式戦の出場は控えたらどうか」と話すと、驚いた顔をして「そんなこと考えたこともなかった」と答えた。数日して「そうさせていただきます」と話してきたが、彼女にとってサッカーのプレーと審判の両立は当たり前のことのようだった。

(2)へ続く
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