■劇的弾に「ディス・イズ・フットボール!」

 今節行なわれた試合では、水戸対徳島ヴォルティス戦がドラマティックだった。

 ホームの水戸は30分過ぎに退場者を出してしまい、10対11での戦いを強いられる。それでも0対0でしのいでいたのだが、89分にゴールを喫する。昨シーズン在籍したU―21日本代表FW藤尾翔太に、ヘディングシュートを決められてしまうのだ。

 直後にアディショナルタイムが4分と表示される。失点直後には倒れ込む選手もいた水戸だが、闘争心が折れることはなく、エネルギーも枯れていない。

 93分20秒を指すところだった。GKのロングキックを安藤瑞季がヘッドで落とすと、土肥航大がボールを収める。DFが間を空けた瞬間に左足を振り抜くと、力強い一撃がゴール右上に突き刺さった。サンフレッチェ広島から期限付き移籍中の土肥は、プロ3年目での公式戦初ゴールだ。

 歓喜を爆発させる選手たちが、観衆の大きな拍手を浴びる。直後に試合が終わるとまた拍手が沸き上がり、スタンドで挨拶に行く選手たちにさらに拍手が降り注がれる。ドラマティックな展開に、スタジアムの熱が上がった。

 試合の秋葉忠宏監督は「ディス・イズ・フットボール! 素晴らしいですね!」と興奮を抑えられない。「これが水戸ホーリーホックのDNAですから。最後まで走り切る、あきらめない。あの時間帯に先制されても、最後まで不屈の闘志を見せた選手を含めて、全員でつかんだホントに素晴らしい勝点1だと思います」と、熱い思いを言葉にした。

 今シーズンの水戸は連敗スタートとなり、10試合を終えて2勝3分5敗と苦しい序盤戦を過ごしている。順位も20位に沈んでいるが、この引分けは転機となるかもしれない。情熱的な指揮官は、「次もホームで戦えますので。この空気感、この勢いをしっかりと次へ生かせるようにしたい」と最後まで熱い口調で語りかけた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3