さらに、ネイマールへの質問攻撃で会見が長引き、ブラジル代表のプレスオフィサーが打ち切りを宣言すると、チッチは「いや、あそこでさっきから日本人が手を挙げているではないか。彼の質問を最後にしよう」と静かな口調で制した。欧州やブラジル人記者たちの遠慮会釈のない質問の最中、辛抱強く手を挙げていたのは、フリーランスの田村修一さんだった。彼の質問に、チッチ監督は丁寧に、そして誠実に答え、会見は終了した。

■6度目のW杯優勝が夢ではない理由

 いまのブラジル代表の試合ぶりを見れば、どんなに選手が入れ替わっても、ブラジル代表が「父親」のような存在のチッチ監督を中心に家族のような強固な団結力を保持し続けていることがわかる。その面で、現在のブラジルは間違いなく「史上最強」と言ってよい。攻撃面での組み合わせを間違えさえしなければ、圧倒的な強さを見せて6回目のワールドカップ制覇を成し遂げることも夢ではないと、私は思っている。

 かつてのブラジルは、テクニックと才能では欧州チームを圧倒しつつも、フィジカルで苦戦を余儀なくされていた。しかし現在のブラジルにはそのコンプレックスはない。ほぼ全員が欧州のトップクラブの中心選手としてプレーするなか、フィジカル面でも欧州の選手たちと同等、あるいはそれを上回るものをもっていると言ってもよい。「ブラジル2022」は、「史上最強のブラジル」への可能性を十分もっていると見ていいだろう。

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