とくに、1、2月シリーズは大きな危機の中での戦いだった。

 キャプテンとしてチームを引っ張る存在の吉田と、プレミアリーグでも高い評価を受ける冨安の2人は、「高さ」を含めた安定した守備力と前線への正確なパス能力を兼ね備えた日本サッカー史上最高のCBコンビであり、“絶対的存在”と考えられていた。

 しかし、それでも代役としてCBを務めた谷口彰悟板倉滉は卒のないプレーを見せて豪サウジアラビア戦も無失点で切り抜けることができた。谷口も板倉もボランチでもプレーできる選手だけあって、パス供給の面でも素晴らしいパフォーマンスを示した。

■森保監督が新戦力を使わなかった理由

 最終予選に入ってから、森保監督に対しては「メンバーを固定しすぎなのではないか」という批判が渦巻いた。

 たしかに、最終予選では3試合目までで2敗を喫し、その後も攻撃陣が空回り。ベトナム、オマーンとのアウェー戦でもそれぞれ勝点3は確保したものの、得点は1点止まりだった。

 大迫はかつてのようにゴール前でボールを収めることができなくなり、2次予選までは日本代表の得点源だった南野拓実もリヴァプールで出場機会が与えられない時期が続いたせいか得点感覚を失っていた。人気の高い久保建英など「新戦力を使え」といった声が高まるのは当然の反応だった。

 しかし、それでも森保監督は頑なにメンバーを固定して戦った。

 メンバーやシステムを変えることによってチーム状態が上向く可能性は確かに存在する。だが、同時にぎりぎりの状況で戦っているチームに手を加えることで微妙なバランスが崩れてしまう恐れもある。まして、トレーニングの時間が取れないのが代表チームというものの宿命なのだ。

 そうした状況を考えて、森保監督は「できる限り従来通りのチームで戦う」ことを選択したのだ。

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