国際大会の会場に入るにあたって、誰もが等しく通らねばならない関門がある。どの国の記者でも、元選手であっても関係ない。ただし、一人だけ別次元の男がいた。偉大なるペレとの邂逅を、蹴球放浪家・後藤健生が振り返る。
■ドイツらしからぬ問題
2006年のワールドカップはドイツで開催されました。この時は大会前に各地で行われる準備試合(たとえば、日本代表がドイツと引き分けた試合とか)も観たかったので、少し早めの5月29日にドイツ入りして、ケルンのミュンガースドルファーシュタディオン横のアクレディテーション・センターでADカードを取得することにしました。
開幕までまだ11日もあったのでアクレディテーション・センターはガラガラでしたから、手続きはすぐに済みました。あとは、出来上がったカードをピックアップして、それから昼飯でも食いに行こうと思っていました。
ところが、なかなかカードが出来てこないのです。そのうち、ボランティアのお兄さんが状況を説明してくれました。
「ごめんなさい。カード自体は作れたんだけど、パウチするためのプラスティックが足りなくなってしまったんです」というのです。
「今、取り寄せているんですが、2、3時間はかかると思います」
トラムに乗って街中に戻ってまた出直してきても良かったのですが、それも面倒なので結局、スタジアムの周囲をブラブラしながら3時間くらい待ってようやくADカードを手にすることができました。