試合間隔の短い連戦で、顔ぶれもがらりと変わっている。昨季上位同士の対戦ながら、開始前は疑問符も浮かんだ横浜F・マリノスとヴィッセル神戸の対戦だったが、ふたを開ければ希有なほどの好ゲームとなった。これほどまでの素晴らしい試合となった理由を、サッカージャーナリスト・大住良之がひも解く。
■試合を引き締めた両チームのGK
この試合を好ゲームにした要因のひとつが、両チームGKの活躍だった。前半14分、神戸の小田裕太郎が左を突破、そのパスから完全にフリーになった武藤嘉紀がシュートした。しかし横浜FMのGK高丘陽平は左に移動しながら自分の右にきたシュートを足1本で防いだ(武藤はこの直後のプレーで負傷)。この守備を皮切りに、高丘と前川黛也は次々と好セーブを見せた。とくに後半は両ゴール前で交互に決定的なシーンが生まれ、それをGKが鮮やかに防ぐという形が連続した。
最初に紹介したが、この試合で記録されたシュート数は、横浜FMが21本(前半10本、後半11本)、神戸が17本(前半5本、後半12本)、計38本にもなった。Jリーグでは、両チーム合わせて1試合平均シュート数が23本程度だから、この試合がいかに活発だったかわかる。もちろん、何本打ってもゴールの枠に飛ばないシュートでは意味はない。だがこの試合では、私が数えたところ、21本がゴールの枠内に飛んでいる。そのうちゴールにはいったのは2本だけだったが、GKの好セーブが8回もあった。
横浜FMが1点リードしていたが、神戸がいつ同点ゴールを決めてもおかしくない形勢。後半43分には神戸のリンコンのシュートを高丘が好セーブ。試合は「4分間」と示されたアディショナルタイムにはいっても緊迫した状況が続き、その最初の1分には横浜FMの交代選手永戸勝也のシュートを神戸GK前川が防いだ。