■試合をエキサイティングにした両チームの走力

 そして時計が49分を回ったとき、横浜FMに勝利をもたらしたのは、上田益也主審の笛ではなかった。自陣中央でボールを奪った西村がドリブルで持ち上がり、左に回っていた水沼を走らせる。そして水沼の内側にサポートしてボールを受けた西村は、カバーにはいったサンペールを簡単にかわしてペナルティーエリアへ。そして右からきた小林を最後の力を振り絞ってかわすと、右足の内側でまくようにけってゴールの右隅に送り込み、勝負を決定づける2点目を決めた。そして神戸のキックオフを待つことなく、試合は終了した。

 「蔓延防止」下で制限2万人の試合。水曜夜の試合に駆けつけたファンは1万3801人だった。しかしその誰もが、ダイナミックな魅力にあふれたサッカーを心から満喫しただろう。敗れた神戸はこれで4戦して2分け2敗。まだ勝ち星がないが、この日のパフォーマンスは今後に大きな期待を抱かせるものだった。なかでも小田の活躍が与えた希望は大きいに違いない。

 なぜこのようなエキサイティングで内容のある試合になったのか―。第1に挙げられるのは、攻撃と守備を休むことなく繰り返した両チームの献身的な動きである。横浜FMはチーム走行距離で、今季21試合(42チーム)で2位の125.969キロ、神戸も8位の121.233キロを記録した。スプリント回数でも、横浜FMの235回は21試合で2位、神戸の225回も5位という多さだった。

 そしてその運動量を、効果的な攻撃、シュートにつながる攻撃に結びつける力が、両チームにはあった。それがシュート38本、「枠内シュート(非公式な数字)21本」として表れ、さらにGKの数多くの好セーブを生む試合にした最大の要因だった。

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