■監督の「ブーム」の変遷を超えて

 Jリーグの初期。日本サッカーの戦術的能力は現在と比べたらはるかに低いレベルにあった。そんなJリーグの初期。ネルシーニョ監督が試合の流れを見て、試合中に指示を送って素早くシステム変更を行って流れを取り戻してチームを勝利に導く姿はとても印象的だった。

 そんな時代から、30年近くにわたって今でも現役監督というのだから、ネルシーニョ監督は(カズと同様に)まさにJリーグの歴史を体現するような存在と言っていいだろう。

 日本のサッカーも、この30年間に急速に成長を遂げた。今では、試合中のシステム変更など、どのチームでも、どの指導者でも当たり前のように行っている。現在監督を務めている1970年代生まれの日本人監督は、Jリーグでプロ選手として活躍した経験を持っているのである。

 そんな新しい世代の若い監督たちとやり合うネルシーニョの姿は“老年の星”とでも言えようか。

 また、Jリーグ発足当初は数多くのブラジル人監督が活躍していたが、今ではブラジル人監督はネルシーニョただ1人となっている。その後はイビチャ・オシム監督やペトロヴィッチ監督などの旧ユーゴスラビア系の監督たちが活躍し、最近ではスペイン人監督が脚光を浴びるようになってきた。もちろん、鬼木監督をはじめ、今では日本人監督もこうした外国人指導者とまったく遜色のない活躍を見せている。

 僕個人としても、28年前に来日した直後から見知っているネルシーニョ監督。今シーズンは、ぜひ積極的な采配で柏のJ1残留、いや上位進出を成し遂げてほしいものである。

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