■領土紛争の勃発に思うこと

 ウクライナとロシア、あるいはウクライナとポーランドは歴史的には深く結びついています。

 平坦な地形が広がるこの地域ではロシア人、ウクライナ人、ポーランド人、リトアニア人、ドイツ人、ユダヤ人などが入り混じって暮らしていたのです。そもそも、中世のヨーロッパでは「民族」というのは人の属性の一つにすぎず、僧侶とか貴族、商人、職人、農民といった「身分」の方がずっと重要だったのです。

 そんな土地で、国境を巡って「この土地は我が国の固有の領土」などと主張することはまったく意味がないことでしょう。2012年のEUROや2018年のワールドカップの時にこうした地域を歩き回ったので、そのことを体感することができました。

 ちなみに、2018年のワールドカップのラウンド16で日本代表がベルギーと死闘を繰り広げたロストフ・ナ・ドヌーも、ロシアとウクライナの国境から70キロほどのところに位置します。

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