■ヴェンゲルのアーセナル行きと異なる点
Jリーグ・クラブの監督を経験した指導者がプレミアリーグで成功した例としては、20年以上にわたってアーセナルを率いていくつものタイトルをもたらしたアーセン・ヴェンゲルの先例があるが、ヴェンゲル監督がもともとASモナコを率いてフランス・リーグアン優勝やヨーロッパ・チャンピオンズリーグでの決勝進出などの実績を持っていた指導者だったのに対して、ポステコグルー監督はギリシャ生まれではあるが、オーストラリア育ちの人物であり、ごく短期間ギリシャの3部リーグで監督経験があるものの、ヨーロッパでは無名で、オーストラリアと日本での実績を評価されてセルティックの指揮を執ることになったという点が重要だ。
セルティックとの交渉が進行している頃には「ライセンス問題」が取り沙汰された。ポステコグルー監督がヨーロッパのトップリーグで指揮を執るために必要なUEFAプロライセンスを持っていなかったからだ。UEFAのライセンスを持っていれば、日本でもオーストラリアでもトップリーグのチームの監督となれるが、日本のS級ライセンスを持っていても、ヨーロッパでは監督になれない。それが、日本人指導者がヨーロッパに渡ることを妨げてきた。