■裏方へと回った理由

 高校では心に深い傷を負うことにもなったが、念願だったキャプテンとして全国の舞台にあと一歩に迫った。子どもの頃から目立ちたがりで、ぶれることなく父と同じプロサッカー選手になるという夢を追いかけてきた男は、どうして裏方に回ることになったのか。

「高校まではたぶん、自分のことしか考えていなかったんです。だから最後の試合に負けた後のインタビューで、あんなことを言っちゃったと思うんです。大学に入ってからは、チームのために動くということを勉強させていただきました。大学時代には、サッカー部を辞めて留学したりする友だちも多くて、自分がいた場所から離れるのは逃げではなく、新たなチャレンジなんだと感じていました。

 だから、板倉からマネジメントを任せたいと言われた時には、これは人生の分岐点だろうとポジティブに受け取りました。きっかけ、タイミングというのは、あるものですから」

 板倉も、シーズン途中である冬の市場で移籍したため、フローニンゲン加入から半年間はトップチームでまったく出場機会がなかった。2019年の夏に新シーズンに入ると、監督も替わっていないのに、スタメンとしてフル出場を続けるようになった。

 板倉と藤川さん、2人の新しい季節が始まった。

(6)へ続く
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