■一人の選手が進んで手を上げて病院に!

「フロンターレサポーターだった息子に、最後に選手に会わせてあげたい」

 両親はこう考えたという。川崎フロンターレは、「ブルーサンタ」といって、選手が水色のサンタクロースに変身して、市内の小児科病棟を訪問している。これは、「病気と闘っている子どもたちに少しでも元気をプレゼントできれば」と、1997年のチーム創設時から継続して行ってきた活動だ。

 とはいえ、その中学生に何ができるのか、ということを考えれば、選手としても対応を考えたはずだ。何ができるのか、面会して何を伝えられるのか――。

「そういった状況にもかかわらず、一人の選手が進んで手を上げて病院に向かいました」

 実際にその選手は病院を訪れたという。その後、中学生は一時的に容体が上向いたものの、残念ながら、旅立ってしまったというが、「サッカー選手という立場を超えた、一部の人しか知らない行為・行動、人として素晴らしい行為・行動を伝えたかった」と堤理事長は話した。

「喜びを胸に抱えて旅だったはず」と話し、「私たちが応援している選手、チームはこんなに素晴らしいんだ!」と力強く言葉を振り絞った。

 病院を訪れた選手の名前は小林悠だ。今年、川崎で13年目を迎えるストライカーは、ピッチの外でも人としての温かさを伝えてくれた。

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